『とあるハンターの日常』
パーラシアの一角にある、とあるハンターの家。
メムの朝は、遅い。
放っておけば、パーラシアの太陽がそれなりに高く昇るまで、ゆっくり眠っていることだろう。
それが無いのは、一緒に住むTAURUSのおかげだ。
彼は、メムの代わりに、朝食を作り、寝室に来た。
「……まだ寝てる」
布団をぽふぽふっと叩き、「朝だよ、ごはんだよ」と声をかける。
メムのブブリである、アプリコットは目覚めたものの、本人はまだ起きない。
「起きないの? ごはん、食べないの?」
何度か声をかけると、「……今日のごはん、何?」と枕に顔をうずめたままで聞いてくる。
「蜂蜜かけた、ホットケーキ。
デザートもあるよ」
「やったね!」
現金なもので、メムはさっさと布団から出て、階下へ降りていった。
「今日はどこに狩りに行くの?」
「んー……そうだなぁ」
前に狩ったドラゴンは、なかなか苦戦した。
昨日はバトルコロシアムで、かなりいい成績をおさめた。
他にもいろいろ。
ふたりとも同じねこ飯ギルドに所属しているハンターのため、食事の席でもこういった話が出てくる。
TAURUSより、若干メムの方がレベルだけは上だが、ほわほわしていて、頼りにはならない。
日常生活においても、ほぼ確実にTAURUSがいなければ、まともに暮らせていない予感しかしない。
元来、メムはまったりとお茶を飲んだり、絵を描いているのが好きな性分で、なんでハンターになったのか、よくわからないタイプだったりする。
「狩りが終わったら、お茶にしようかー」
……ティーセットを持ち歩いて狩りに行く気なのだろうか、とTAURUSは一瞬心配になった。
「違うって。
一度ギルドに寄ってから、家でお茶しようよ。
この紅茶、早く使いきらないと、期限が」
大量に買い込む癖を直せば良いような気もしなくはないのだが、おいしいので文句は言えない。
「蜂蜜入れて飲もうねー」
「そうだな」
その後、狩りに行かずに、絵を描くか寝るんだろうな……メムは。
そんなことをTAURUSは思う。
ギルドの中では、そんなに強いわけでもないが、弱いわけでもない。
ただ、凡ミスで大怪我することもあって、自身の聖教士としての力で回復させながら、狩りをしているような人間である。
本当に、なんでハンターになったのか、よくわからない。
TAURUSはガンスリンガーとして腕を磨いている最中なので、なるべく狩りに出たいのだが、メムがこうなので、なかなか実現できずにいる。
「もっといろんな人と狩りに行けばいいのに」
「簡単に言うけどなぁ……」
正直、周りが強すぎて、圧倒されることもあって。
TAURUSとしては、気心知れているメムとの狩りの方が気楽ではあるのだ。
そんなことを知ってか知らずか、のんびりひなたぼっこをしている、猫のような表情で、うとうとし始める。
「メムー、そろそろ狩りに行くぞー?」
「んー……」
軽く伸びをする。
「眠い」
「おいこら」
これも日常の風景の一コマであった。
END